大嶋潤子さん① 〜出会いと「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」

 

『ウールカ・タイムズ』記念すべき初回は、シンガーソングライターの大嶋潤子さんです! 大嶋さんは、3オクターブにわたる音域、心にしみわたる温かい歌声でクラッシックからポップスまで歌いこなす素敵なマダムです!

大嶋さんは、32歳で突然失明。そして離婚。そこからの出産、子育ての後に、全盲の男性と再婚。41歳で歌に出会い、そこから太陽カンツォーネコンコルソ・クラシック部門2年連続上位入賞された実力派です!⇨ 大嶋さんのHP

愛子(以下A):お久しぶりです!

大嶋さん(以下O):こちらこそ、お久しぶり!今日はありがとう!

A:大嶋さんは出会った時からオーラが凄いなって!いや、オーラとか見えるわけではありませんが(笑)

O:でも、愛子ちゃんってアーティストだから感じる力が凄いよね!

A:いえいえ(汗)でも、オーラは見えませんが、その人の発している気みたいなものには敏感かも!ともあれ、大嶋さんと初めてお会いしてお話しした時、やっぱり第一印象の通り只者ではなくて、心眼が鋭い方だなって思いました!一応、私には哲学者としての一面もあるので、研究するだけではなく、自分の日々の人生に哲学することを通して向き合っている側面もあるんです。だから、自分の内面的な問題についても大体は自覚しているのですが、普段から内省することを習慣にしている私でも長年気付かなかった、私の心の傷であり心の癖をズバリと言い当ててもらったのは大きかったです!

O:ありがとう〜!嬉しいわ!

何故、愛子ちゃんがソロで音楽活動しないかって話だったよね。

A:はい(苦笑)

それで、現代(いま)って「余裕のある大人」が減っている気がするんです。経済的な余裕という意味ではなくて、人格がちゃんと育って整っているというのかな…心にも精神にも、そして振る舞いにも、どんな時でも対応できる「ゆとり」がある。そんな本当の意味での「余裕のある人」に久しぶりにお会いしたな、というのが大嶋さんと出会った時の実感です。

O:あら〜、嬉しい、嬉しい(笑)

やっぱり、本人を目の前にしていると感じるものがあって…もちろん、何の準備もしていないし、何か調べたわけでもない。合っているか分からいけれど、でも、こうやって相対して話していると、(相手の)思ったことが見えてくるんだよね。

A:私は、フィジカルな視力を失った方の方が、よく物事を見ている気がします。目からの情報って膨大なので、自分も含め、視力のある人間って、それ以外のことを沢山見落としていると思うんです。大体、見てるけど全部見えてるかって言ったら、そうじゃない。大嶋さんは「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」ってご存知ですか?

O:うん、もちろん知ってるよ!

A:実は、あれが日本に上陸して直ぐに、友達と体験しに行ったことがあります!

O:体験したの!?

A:はい!それで、私が「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」に参加した時に、7〜8人のグループなんですけど、本当に真っ暗で、目を開けていても閉じていても全くの暗闇で、初め、皆んなやっぱり怖いんですよ!

O:あぁ、そうだろうねぇ!(しみじみ)

A:はい、それで、私たちを導いてくれるガイドの人はもちろん全盲の方なんです。それで、その方が「怖い時は怖いって声に出して言った方が和らぎますよ」とアドバイスしてくれたので、グループの皆んなで「怖い!こわーい!」と叫んでいたら本当に和んだんです(笑)

O:へぇ!

A:そこから、50分間くらいの暗闇体験が始まるわけですが、公園で遊んだり、田舎の家の縁側みたいなところで寝っころがったり、はたまたバーに入って、ビールとかジュースとかを注文して、それを飲みながら皆んなでお喋りして楽しみました。そのバーのマスターさんも全盲の方なんですが、ちょっとオネエ調の人でキャラが際立っていてカッコ良かった!

O:うんうん!

A:それで、実際自分が体験してみると、思っているのとは全く違って、何て言うのかな…不思議とあんなに真っ暗なのに、10年以上経った今でも、情景が浮かぶんです。匂いとかも鮮明に覚えていて…それで、一番興味深かったのが、その50分とか1時間近い体験を終えて、ガイドの方が「ここから先、徐々に光の世界に戻ります。皆さん、どんな気持ちですか?」って聞いてこられたんです。そしたら、私を含めグループの全員が「戻りたくない」って言ったのですよ!「怖い」って(笑)

O:へぇ!そんな気持ちになったわけ!?それは不思議だなぁ!?

A:えぇ、そうだったんです(笑)まぁ、もしかしたら、たまたま、そのグループの波長がそういう感じだったのかもしれませんが、やはり、その暗闇での体験が本当に豊かで優しさに溢れていたからだと思うんです!少なくとも、そのグループで共有した暗闇の世界は柔らかく優しい世界だったんですよね。

O:へぇ〜〜〜!

A:まぁ、実際、リアルに失明したら、そんな悠長な話じゃないと思いますし、現実は「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」の世界のように守られていないですし、危険もあるし、失礼な人、思いやりに欠ける人もいると思うので、そんな甘い話ではないと察します。

でも、少なくとも、私にとって、あの経験を通して、いわゆる「障害者」と言われている人たちに対しての考えというか体感が変わりましたね。それまでは、上目線のつもりではないのだけれども、「お気の毒」とか「可哀想」というような思いがあった。でも、「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」の体験を通して、何ていうか…真摯に「対等なんだ」っていう実感を得た!?この社会は「健常者」を標準に合わせて出来ているから、もちろん、そこで不便なことって沢山あるだろうし、確かに「見えない」「聞こえない」「歩けない」とか、そういう欠けている部分では不便ではあるかもしれないけれど、だからって、その人の総合的な体験の豊かさとは関係が無いっていうのかな…全員が全員じゃ無いだろうけど、あの暗闇での体験のように、何かを失って別の何かをもっと得るという事も有り得る。どこに人生の豊かさがあるかって、いわゆる「健常者」の物差しじゃ、計り得ない気がしています!

O:う〜〜ん、そうかもね!!!良いところに気がついたね!

A:それで、私にとって、あの暗闇で体験した豊かさを全て内包しているのが大嶋さんなんです(笑)部屋に入って一目見たとき、この人、輝いてるって!後光が差していました(笑)

O:わぁ!ありがとう!嬉しいなぁ!そういう風に見てくれる愛子ちゃんって、やっぱり、ちょっと目線が違うわよね(笑)

A:いえいえいえ(照)で、結局、まだ前置きなんですが(爆笑)どうしても、大嶋さんとの出会いと「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」の話をしたかったんです。

ともあれ、私が守られた中で体験しただけとは違い、実際、大嶋さんは32歳で失明されたわけですけれども、やっぱり、これって途方にくれますよね…

O:うん、そうだねぇ!でもね、これ、コンサートでも言ってるんだけど…「死のう」って感じは無かったんだよね。不思議とね。でも…

続く。

とっても聞き上手な、優しい大嶋さん!とっても長い前置き話でしたが、嫌な顔一つせず、私の思いの丈に傾聴して下さいました。

さて、次回はやっと本題です。32歳で失明した大嶋さん。彼女の体験談や考え方など、じっくりと深掘りさせて頂きます!